バカの壁で有名になった養老孟司氏の本。
解剖学者としての真骨頂だと思う。

 一般に自然科学者は、考えているのは自分の頭だということを、なぜか無視したがる。客観性は自己の外部に、つまり対象にあると思いたがるのである。
しかし、そのような「科学研究の結果」、すなわちいわゆる業績は、自分のもの、つまり自己の内部のものだと思っているらしい。ノーベル賞を貰ったりするからである。
そのような業績は、多くの場合、当人の脳の機能である。しかも、その業績が誰にでも理解できるとしたら、それは誰の頭にも同じ機能が生じ得るということである。
そう考えると、「客観的事実に基づいた研究業績」とは、本当にはどこが自分の業績か、そこが判然としなくなる。その為に、自然科学者は、自分と他人の脳のことなど考えたくないのであろう。

要するに、「脳が全て」ということらしい。世界を理解しようとする際には、必ず“自分の脳”というものが介在するという話。著者は言う。別に思想や哲学の話を否定しているわけではなく、基本的概念として脳が存在している。つまりメタ的な要素として。

唯心論という言葉があるように、中心は心じゃないか?という疑問が浮かぶが著者は『心は脳という構造の機能である』という。

循環が、心臓という構造の機能であるように。
脳をいくら分解しても心は出てこない。
心臓を分解しても循環という機能が見つけられないように。

心は脳の機能である。

自分が脳についてほとんど何も知らないことを実感させてくれる本。

唯脳論 (ちくま学芸文庫)

唯脳論 (ちくま学芸文庫)

posted with amazlet on 07.12.20

養老 孟司
筑摩書房 (1998/10)
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